隣の家の竹が越境してきたとき

公開 2026年10月20日 更新 2026年10月20日

この記事の結論

  • 民法233条は、越境してきた竹木の「枝」と「根」で扱いを分けています。
  • 根は、境界線を越えていれば自分で切り取ることができます(233条4項)。
  • 枝は、竹の持ち主に切ってもらうのが原則です。2023年4月1日からは、頼んでも切らない、持ち主が分からない、急迫の事情がある、のどれかなら自分で切れるようになりました(233条3項)。
  • 自分で枝を切った費用は、基本的には竹の持ち主に請求できると法務省の資料は説明しています。
  • まずは話し合い。こじれそうなときは、市区町村の無料法律相談や法テラスに相談してください。

この記事は、条文と法務省の解説資料に書かれていることをまとめたものです。個別の事情でどうなるかの判断は、弁護士などの専門家に相談してください。

民法233条は何を決めているか

民法233条は、隣の土地の竹や木の枝・根が境界線を越えてきたときに、誰が切れるかを決めています。条文は次のとおりです(民法 第233条、e-Gov法令検索)。

(竹木の枝の切除及び根の切取り)

第二百三十三条 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。

2 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。

3 第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。

一 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。

二 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

三 急迫の事情があるとき。

4 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

2項と3項は、「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)で加わり、2023年(令和5年)4月1日に施行されました(法務省「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」)。

枝と根の違い

枝と根の一番の違いは、相手に頼む手順が要るかどうかです。

根 枝
自分で切れるか 切り取ることができる(4項) 原則は持ち主に切ってもらう(1項)
自分で切れる条件 条文に条件の書き方なし 頼んでも相当の期間内に切らない/持ち主や居場所が分からない/急迫の事情がある(3項)
2023年4月の改正 内容は変わらず(2項から4項に移った) 3項が新しく加わった
竹の持ち主が複数(共有)のとき ― 共有者の1人が切ることができる(2項)

法務省の資料は、改正前の問題を次のように説明しています。持ち主が枝を切らないときは、裁判を起こして判決を得て、強制執行の手続きをとるしかなく、枝が越境するたびに裁判が必要では負担が重すぎる、というものです(法務省「民法等改正関係(抜粋)」)。

竹は地下茎で広がるので、困るのは根や地下茎のほうが多いはずです。根は4項で切り取ることができますが、自分の土地の側で切っても、地下茎が残れば次の年も伸びてきます。根の止め方は竹の根の止め方・抜き方にまとめています。

なお、地下茎から自分の土地に生えてきた竹やタケノコの扱いについて、この記事で確かめた法務省の資料には説明がありません。迷うときは、相手と話すか、相談先で確かめてから手を付けると安心です。

枝を自分で切ってよい3つの条件

枝を自分で切れるのは、233条3項の3つの場合のどれかに当たるときです。法務省の資料の説明と合わせて整理します。

  1. 頼んでも切ってくれないとき:竹の持ち主に「枝を切ってください」と催告(お願い)しても、相当の期間内に切らないとき。法務省の資料は、「相当の期間」は枝を切るのに必要な時間の猶予を与える意味で、事案によるが基本的には2週間程度と考えられる、としています。
  2. 持ち主や居場所が分からないとき:竹の持ち主が誰か分からない、または居場所が分からないとき。
  3. 急迫の事情があるとき。

竹の持ち主が複数いる(共有の)場合、1の方法で切るときは、基本的に共有者全員に催告する必要がある、と法務省の資料は書いています。ただし、居場所が分からない共有者については2に当たり、その人への催告は要りません。

枝を切るために隣の土地に入る場合は、別のルールがあります。民法209条で、枝の切り取りのために隣地を使うことはできますが、住んでいる家に入るには住んでいる人の承諾が必要です。また、あらかじめ目的・日時・場所・方法を隣地の持ち主(借りて使っている人がいればその人にも)に知らせる必要があります。法務省の資料は、急ぎでない場合の通知は通常2週間程度前が目安としています。使うのを断られたときに力ずくで入ることは、一般に禁止されています。

切る費用は誰が負担するか

自分で越境した枝を切った費用は、基本的には竹の持ち主に請求できると考えられる、と法務省の資料は説明しています(民法703条・709条)。理由は、枝が越境して土地の所有権を侵害していること、土地の持ち主が切ることで竹の持ち主が本来負っている枝を切る義務を免れること、の2つです。

一方で、次の点に注意してください。

  • 「基本的には」「考えられる」という書き方で、どんな場合でも必ず請求が認められるという意味ではありません。
  • 根を切る費用について、この記事で確かめた法務省の資料には説明がありません。
  • 隣地を使って枝を切ったときに、隣地の持ち主などが損害を受けたときは、その人は償金を請求できます(民法209条4項)。

業者に頼むといくらかかるかは、竹の伐採を業者に頼んだときの費用にまとめています。請求を考えているなら、切る前に見積もりを取り、相手にも見せておくと話がしやすくなります。

話し合いの進め方

越境の問題は、まず竹の持ち主との話し合いから始めます。条文の手順に沿うと、次の流れになります。

  1. 状況を記録する:越境している枝・竹・根の写真を、日付が分かる形で撮っておきます。
  2. 境界を確かめる:どこからが自分の土地かをはっきりさせます。境界標があれば位置を確かめます。
  3. 持ち主に頼む:どの枝を、いつまでに切ってほしいかを具体的に伝えます。233条3項1号の「催告」にあたるので、いつ何を頼んだかが後で分かるよう、手紙などの形で残しておくと説明しやすくなります。
  4. 相当の期間を待つ:法務省の資料の目安は基本的に2週間程度です。
  5. それでも切らないとき:自分で切ることを考えます。隣地に入る必要があれば、209条の通知を先にします。

竹林ごと伐ってほしいなど、枝を切るだけでは済まない話は、相手の費用の負担も大きくなります。相手が竹林の整備をする場合は、県や市町村の補助金が使えることもあるので、竹林の補助金・貸出を伝えてみてください。

空き家で持ち主が分からないとき

隣が空き家で、竹の持ち主やその居場所が分からないときは、233条3項2号に当たり、催告をしなくても越境した枝を切ることができます。

法務省の資料は、隣地使用のルールについて、持ち主の居場所が分からないとは、現地や不動産登記簿・住民票などの公的な記録を調べても分からないときだと例を挙げています。この場合、隣地を使うときの通知は、持ち主が分かったあとで遅れずに知らせればよい、としています。

枝を切るだけでは片付かない、荒れた竹林や空き家そのものが危ないときのために、2023年4月の改正では「管理不全土地・建物管理制度」も作られました(民法264条の9〜264条の14)。利害関係のある人の請求で、裁判所が管理人に管理させることができる制度です(法務省「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」)。申し立ての手続きや費用は事案によるので、使えるかどうかは弁護士などに相談してください。空き家の竹林で起きることは放置竹林で起きることにもまとめています。

困ったときの相談先

話し合いがまとまらないときや、切ってよいか判断がつかないときは、専門家に相談します。

  • 市区町村の無料法律相談:市区町村によっては、弁護士による無料の法律相談を開いています。役所のホームページや広報誌で日程と予約の方法を確かめてください。
  • 法テラス(日本司法支援センター):法的トラブルの相談窓口「法テラス・サポートダイヤル」は0570-078374です(平日9時〜21時、土曜9時〜17時)。経済的に困っている人には、弁護士・司法書士との無料法律相談や費用の立替えがあります。利用には収入や資産が一定の基準以下などの条件があり、審査が必要です(法テラス「無料法律相談・弁護士等費用の立替」)。

相談のときは、越境の写真、境界が分かる資料、相手に頼んだ日と内容の記録を持っていくと、話が早く進みます。

よくある質問

隣の竹の根が自分の土地に入ってきたら、切ってもよいですか?
民法233条4項は、隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができると定めています。枝と違い、先に相手へ頼むという条件は書かれていません。
越境した竹の枝を自分で切ってもよいですか?
原則は竹の持ち主に切ってもらいます。2023年4月1日からは、頼んでも相当の期間(法務省の資料では基本的に2週間程度)切らないとき、持ち主や居場所が分からないとき、急迫の事情があるときは、自分で切れるようになりました。
自分で枝を切った費用は、隣の人に請求できますか?
法務省の資料は、基本的には竹木の持ち主に請求できると考えられる、と説明しています。個別の事情で変わるため、争いになりそうなときは弁護士などに相談してください。

出典

数字は上の資料の原文で確かめています(調べ方)。

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